AX

「週刊少年サンデー」1996年45号掲載 久米田康治先生インタビュー 紹介

「週刊少年サンデー」1996年45号に久米田康治先生のインタビューが載っていることを思いがけず知りました。読んでみたところ、現在の久米田先生の「芸風」と比べていろいろ興味深い点があります。そこで、その内容をかいつまんで紹介したいと思います。


まず、掲載されている1996年は、久米田先生にとって一つの区切りの年でした。 『行け!!南国アイスホッケー部』の連載終了・『太陽の戦士ポカポカ』連載開始という大きな節目があったんですね。そしてこのインタビューが載っている96年45号は、「ポカポカ」の第7話が掲載されています。

久米田先生のインタビューが載っているのは、巻末の連載企画記事「投稿コミックショー」2ページ分です(452~453頁)。



絶好調新連載!!フシギむかしロマン[太陽の戦士ポカポカ]
久米田康治先生インタビュー!


あっという間に大人気、快調新連載『太陽の
戦士ポカポカ』!! ポカポカ誕生の秘密に今
回は肉迫!! なぜかクリスマスソングが流れ
る仕事場で久米田先生を直撃!! 全員必読!




このようなあおり文とともに、当時の久米田先生のお姿が掲載されています。


アニメのOPで流れた生前葬の遺影と比べてみます。(1期4話OPより)


おおぉ……ほとんどそっくりそのまま……でもやはり20代後半の若さに満ちあふれておられますな。

インタビューの流れは次のようになっています。

・『太陽の戦士ポカポカ』を描こうと思ったきっかけ
・縄文文化や古代史でいくという構想の有無
・連載を始めるうえで大変だったこと
・連載で苦労している点

以下、興味深いところを紹介して、折に触れコメントを付けていこうと思います。見出しは原文どおりです。






読者のみんなに楽しんでもらえるものを


――今回、『太陽の戦士ポカポカ』を描こうと思ったきっかけは?


●久米田●前作の『行け!!南国アイスホッケー部』が青春スポーツ漫画でしたから、それとは違うコメディーを描きたかったんです。



おおっと、いきなりこれは!? 「南国」がどんな漫画だったかというと、当時の久米田先生の渾名「下ネタ王子」から推察する限り、単なる青春スポーツ漫画ではなかったことは明らかです。(現物をお読みの方はよくご存知のとおり)なので、さっそくインタビュアーの方からツッコミが入っています。



――ええっと…。確かにある意味『行け!!南国アイスホッケー部』は、青春スポーツ漫画でしたね。で、『太陽の戦士ポカポカ』を描こうと思ったきっかけは?


●久米田●……いや、正直な話、本当に前作とは違うものを描きたかったんです。『行け!!南国アイスホッケー部』は、ちょっとアダルトというかマニアックになりすぎて、用語とか知らない人には伝わらない部分もあってキツかったところがあったと思うんです。そういう高学年の人にしか通用しない作品じゃなくて、ちゃんと少年誌の基本に立ち返って、みんなに楽しんでもらえるものを描こうと。




実際は、「ちょっとアダルトというかマニアック」どころではなく、ある意味極限まで推し進めていかれた所があったように思います。



ただ、久米田先生は、本当に「下ネタ王子」からの脱却を図っておられたフシがあります。「ポカポカ」第1回の巻頭カラー頁で、作者のお名前が次のように表記されていました。

……「下ネタ王子」から「夢大将’96」へと……「絶望先生」の冬将軍が出た回で、「夢」という言葉に否定的なニュアンスのコがいたなぁ、なんて思い出してニヤニヤしてしまいます。(もちろん、その時には「夢」という言葉は別の元ネタがあったのですが……)






原始的野性的本能をストレートに描く!?


そして、「ポカポカ」で縄文文化・古代史ロマンをネタにして描こうという構想があったのかと訊ねられると、あっさり否定されています。「漠然と釣りをテーマにしたまんがを描こうかなといっていたくらい」と言っておられたのが、 「いつの間にかむかしロマン爆発まんがになっていたんですよ。不思議ですよね(笑)。」という流れのようで……



では古代史や縄文文化に興味はまったくなかったかと問われると、そういうテレビがあったら見たり、記事を読んだりしていたくらいで、それをきっかけに「ポカポカ」を描こうと思ったのではない、と、再度否定しておられます。「まず古代ロマンありき」の漫画ではなかった、ということでしょうか。この後、こんなことを付け加えておられます。



●久米田●(略)ちょっと真面目な言い方をさせてもらえば、現代っ子がストレスたまってるみたいなんで、野性的な原始に近い本能に忠実なキャラクターを出そうと。そういうところから始まってるんです。なぜかそれをストレートにまんがにしたら、見事な原始ロマン爆発まんがになっていたというワケなんですよ。いやぁ、不思議ですよね~(笑)。



この当たりの話の流れは、最近のインタビューでも見られるように思います。また、去年夏の台湾ご訪問の際になされたラジオご出演の時の声で再生されてしまいます……



しかし、「本能に忠実」というところが、どうしてもあっちの方向にいってしまうようで、ポカポカがなぜかぱんつを被っているシーンが頻繁に出てくるようになりました(笑)。そもそも連載第2回からそっち系のネタが出てきてしまっています。






陸のキャラクターが一番の難問でしたね



――連載を始める上で大変だったことはなにかありますか?



●久米田●『行け!!南国アイスホッケー部』の連載が終わってから、新連載まで3週間しかなかったことです(笑)。まあ、これは冗談として、ポカポカとかは素直に小さい月斗みたいなヤツとかいってキャラクターを造れたんですけど、もう一方の主人公、陸のキャラクターが難しかったですね。




「南国」を終えた時点で新連載まで3週間しかなかったことは、「ポカポカ」第1巻巻末のおまけページにも書かれています。何せ、1996年34号に掲載された「南国」の最終回の最後の頁にばっちり次の連載の開始号が大きく載っていた位ですから。その画像がこちらです。

ご覧の通り、「39号より連載開始決定」と書かれています。



ここで、34号から39号まで5号(5週間分)あるのでは、と指摘される方がおられるかもしれません。しかし、「ポカポカ」の新連載に当たって、第一回は表紙+巻頭カラー計5ページ、第2回は2色カラー5ページという大攻勢をかけておられました。(そしてこの45号で、本誌巻末インタビュー……凄いなぁ)


こちらが96年39号の表紙です。表紙のキャラがポカポカくん。

カラー原稿は本編の原稿よりも締め切りが早くなるので、3週間というお言葉は掛け値なしのその通りだと思われます。



インタビューは、続けて陸くんのキャラに関しての苦労話に進みます。



――わりと普通のキャラクターだと思うんですが、どういう部分で苦労したんですか?


●久米田●いや、その普通の部分が一番苦労した部分なんですよ。なんせ、今まであんまり常識的な人を描いたことがなかったもんですから(笑)。(略)




これは意外でした。普通のキャラである陸くんは、「穴を掘りたがる」という一点以外は常識人(スケベでもない)的なキャラだと思うんですが、それで苦労されておられたんですね。



『さよなら絶望先生』の世界で言うと、主人公である糸色望を始めとして絶望ガールズはみなエキセントリックというか、どこか普通ではないキャラです。一番普通なのは日塔奈美ちゃんなんですが、もしかしたらその奈美ちゃんをお描きになる際もやっぱりご苦労されているのか、それとも今はすらすらお描きなのでしょうか。絶望キャラの動かしやすさ・にくさについては、インタビューでまだほとんど語られていないので、将来のインタビューに期待したいと思います。



さらに、他にも苦労している点はないかという質問に、いろいろ悩んでいる部分をお答えになったあと、次のように述べて、最後はいい言葉で前向きに締め括っておられます。



●久米田●(略)でも、大ゴマが使えるのが嬉しいですよね。前は密度が濃かったんで、ちまちま描いてた部分がありましたから。あとは、最初のコンセプトを変えないで最後までいくだけです(笑)。これからもっと意外な物を掘り当てたりしてどんどん面白くなりますから、期待していてください!






以上でインタビューが終了。見開きの左下隅に、久米田先生が当時導入されたマッキントッシュで組んだセットに向かって執筆しておられる様子が一枚載っています。

元の画像が不鮮明なのですが、画面にはおそらくポカポカがいるのではないかと思われます。




以上のインタビューを読んだ感想なんですが、予想以上に現在の久米田先生と通じる点が多いと感じました。(十数年前のご本人なんですから、当たり前といえば当たり前ですが)今よりも少しポジティブな点が多いにしろ、久米田先生の基本的な思考軸はブレておられないように思います。







P.S.ところで、このインタビュー記事は、サンデー巻末の目次からたどることはできません。本文中に載っている「ポカポカ」第7回にも案内なし。目次では、単に「投稿コミックショー 452」とあるだけです。目次だけで久米田先生関連の記事の有無を判断すると手痛い目に遭うな、ということを実感させられました。今後久米田先生関連の書誌を作る方は、やはり当時のサンデーのページを1冊1冊丹念に繰っていくところから始めなければ、どこかで漏れが生じると思います。


 (巻末目次ではもう一つ苦い思い出があります。目次で久米田先生の名前が大きく載っているからといって、必ずしも本編にカラーページがあるとは限りません。)





P.P.S.今回取り上げた「週刊少年サンデー」96年45号は、個人的にもう一つ大事な漫画が載っています。久米田先生に近い存在である藤田和日郎先生の長編『うしおととら』が最終回を迎えたのです。こちらがそのラストのコマの一部です。






P.P.P.S.『太陽の戦士ポカポカ』は全5巻です。

この投稿にタグはありません。

関連する記事



Comment & Trackback

Trackback are closed.

眉をかなりいじったのかな?
神谷さんと同じで、最近の写真の方がかっこいいですね。


>こりんさん
ご指摘で気付きました。なるほど、眉が違いますね。さては、写真を撮る前に美容院で剃ってもらったとか……!?
最近の写真の方には、成熟した男性(というと言葉が変ですが)の雰囲気があって良いですなぁ……


Comment





XHTML: You can use these tags:
<a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong> <img localsrc="" alt="">